201804/09
介護保険の認定を受けている場合、住宅改修費を20万円まで支給してくれる住宅改修給付事業制度。
在宅の要介護者にとってはありがたい制度ではありますが、利用者はもちろん家族やケアマネージャーといった関係者の中で、「建築」や「住宅改修」に詳しい人間はそういないことから、さまざまな問題が発生しています。
そこで、福祉と建築の双方に詳しい「福祉のための住宅改修スペシャリスト」である社会・生活環境研究所の山田隆人代表に、その問題点を語ってもらいました。
私は、作業療法士として診療所で勤務し、訪問リハビリテーションという形で患者さんのお宅へ訪問していましたが、リハビリテーションができることは限定されています。
やはり患者さんが快適な生活を送るには、環境の力を借りる必要があると考えていました。
ひとことに環境といっても、住環境もあれば人的な環境もありますし、設備環境もありますが、在宅の患者さんはほとんど自宅で過ごされることから、やはり住環境や設備環境という物理的な環境のサポートが重要になってきます。
そこで、私もその物理的環境に関する知識を得ようと思ったのです。
訪問介護ステーションでは、住宅改修において困った事態が発生していました。
例えばこの改修工事にいくらかかるのかといった相場を、利用者本人だけでなく家族やケアマネージャーたちも知りません。費用負担も少なく、結果として必要性の低い工事等が付加され、工事金額が高く設定されているというケースが多くあります。制度の利用において、負担する費用が少ない為、サービス利用側が問題視することが少ない状況です。
私は「こういうことを少なくするためにはどうすればいいんだろう」ということを日々考えていました。
そしてその原因としては、やはり住環境改善における建築知識の不足、ということがあると思いました。
当時、私は福祉住環境コーディネーターという資格も取得しましたが、これも建築についての勉強は一部しかしません。
そこで私も建築士の勉強を始め、建築の現場に関われるような機会を創っていきました。大学院の博士課程においても「住宅改修で起こる問題は、さまざまな職種の人々が関わっている中で、どこでどのように発生するのか」という研究をしていました。
作業療法士として現場で実習の指導を行っていました。そこで学生の受け入れをしていましたが、訪問リハビリテ―ションや在宅支援に関して、実習生自身があまりにも知らないことを痛感していました。
これからの在宅介護現場のことを考えると、これはちゃんと教えていかなければいけないと思ったのです。
まず問題は、ケアマネージャーさんが住宅改修に関わるのは年に1~2回しかない。建築の知識もない。
そんな状態でキッチリやれ、と言われても難しいと思っています。
かかる費用についても、皆さんなじみがないので分からない。以前に比べるとシステムや研修制度が出来てきているので、大きなミスは減ってきているとは思いますが。
やはり病院と同じで「セカンドオピニオン」、つまり他業者の意見も聞く、ということが必要だと思います。
見積もりも複数の業者から取ることで、相場が分かってきます。またケアマネージャーなど介護関係者も、常に建築士など住宅改修について相談できる相手を見つけておく必要があります。
利用者から相談があっても対応できるようにすべきだと思います。
地方行政にも、やるべきことはあると思います。介護保険による住宅改修の管轄省庁は厚労省ですが、厚労省はその工事の上限額や単価を示していません。また、必要な工事内容かどうかのチェック体制も十分に整っていないと感じています。
よって各地方行政は、必要な工事内容かをチェックする体制づくりやその過程で必要になる費用に関しても様々な機関と連携を取り構築していく必要があると思います。
それらに加えて、制度の利用に関わる利用者や支援者も任せきりにならないで、建築に関する知識を得ることが、責任を持って制度を利用することへとつながっていくと思います。そうすることで、様々な方々が利用しやすくなり、生活機能の向上が望める制度へとつながっていくと思います。
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