202009/28
高齢になった両親のために手すりを付けようとして施工業者に相談したら、ビックリするほど工賃が高くて困ってしまった、なんて経験はありませんか?また、新型コロナへの感染を心配し、デイサービスなどではなく自宅介護にしたいと考えても、転倒を防ぐためのリフォーム代はかなり高額になってしまうでしょう。そこで今回はDIYで簡単に、そして頑丈に手すりを取り付けるためのコツをご紹介しましょう。
手すりはいうまでもなく、必要な人のために取り付けます。本やホームページに書かれている取り付け位置や高さなどは、あくまで標準的なものです。実際は使う人の状況や取り付ける家(場所)の事情をよく考えなくてはなりません。
手すりは、ところ構わず付ければよいというものではありません。極端にいえば、ご本人が滅多に行かないような場所にわざわざ取り付ける必要はありません。手すりは壁から飛び出たような構造になるため、通行や荷物搬入の邪魔になる場合もあります。まずは手すりを必要とするご本人に、どこにあったら便利か、どこで困ることが多いかを訊いてみましょう。
人によっては、手すりはつかまるだけでなくヒジを乗せる場所でもあります。握る力が落ちてくると、手首だけでなくヒジを使って身体を支えることもあるのです。このような場合には丸い棒状の手すりではなく、台形もしくは四角形の、平らな面の幅が50mm程度の手すりを検討すると共に、ヒジを乗せやすい高さ(90~100cmあたりが多い)も検討する必要があります。
手すりの取り付け方法を見ると、かならず書かれている標準的な取付位置。その多くは、床から75cmの高さと書かれているのではないでしょうか。ただしこの高さは本来、ご本人の身長や体型に合わせるべきものです。つかまりやすい手すりの位置(高さ)は、そのまま力を入れやすい位置ともいえます。普段歩くときはもちろん、足がもつれた場合にもつかまりやすい高さに設置することが肝心です。
また、手すりの太さは何種類か(28mmØ〜45mmØ程度)用意されています。
廊下や階段のように、移動しながらの補助には35mmØを、トイレや玄関先での立ち座りの補助には32mmØなど、ご本人が握りやすい形と、力を入れやすい太さを選びましょう。
ここではDIYに必要な一般的な工具(ドライバー、メジャー、ノコギリ等)以外に、持っているととても便利な工具を紹介しておきましょう。
低速回転ができ、ドライバービット(電動ドライバーの先)が多く付属している電動ドライバーセットが一つあると、とても便利です。ドライバーとしてはもちろん、ビットを替えればドリルとしても使えます。充電式でもコード式でもよいので、高くないものを一式揃えておきましょう。
壁の中のどの部分に柱(下地材)があるか、電気的に探査して位置を教えてくれるセンサーです。電池式の製品がホームセンターなどで販売されているので、一つ用意しておきましょう。一般的な住宅の壁は、決して厚いものではありません。また、壁が板材(木製)ではなく石膏ボードであれば、厚さに関わらず強度は期待できません。手すりを固定する木ネジは、このセンサーで柱のある場所を探してねじ込んでいきます。
電気式の壁内センサーで柱を探知したら、念のためこの道具で柱の位置を確認します。先端に付いた細い針を壁に差し込み、手応えがあればネジ位置をマークします。
一般的な住宅の壁(ユニットバス等を除く)は、板材か石膏ボードでできていることが大半です。先述のように石膏ボードは、手すりを取り付けるには強度が足りません。手すりが外れるなど重大な事故につながりますので絶対にやめましょう。また板材の場合も、厚さが12mm以上の合板への取付をお願いしています。このような場合には、壁内センサーで柱を探し、手すりの支持金具を壁内の柱に取り付けていきます。
ただし、廊下のように手すりが長く必要な場合は、柱と支持金具の間隔が合わなくなってしまうこともあります。このような場合には、先に補強板を壁に取り付け、その上に一定間隔で支持金具を取り付けていきましょう。
同じ家の中でも、ご本人の体勢が変わることによって必要となる補助の方法が変わります。手すりは、取り付ける場所によって取り付け方向や素材、形状を考えましょう。
靴を脱ぐため、もしくは履くためにかがむことが多いのが玄関です。動作としては歩くより、座る、立ち上がるという動作が主になります。一般的には縦型、もしくはL字型の手すりを取り付けるとよいでしょう。高さは縦型の手すり部分の下端が、上り框(あがりがまち)に座って手を伸ばせる位置。上に伸びた手すりの中心の高さを、120cm程度にするのが標準です。L字型の横の部分は75cmあたりにし、あとはご本人の使い勝手に合わせて変更しましょう。また、壁に取り付けをしないで使える床置き型の手すりもあります。使わないときは片付けておけるので、ご本人の外出の頻度に合わせて選べばよいでしょう。
廊下は、歩く(移動する)という用途が主です。一番大事なのはご本人の生活導線です。たとえばご本人の部屋からトイレ、浴室、リビングへの導線に手すりを取り付けるのが基本となります。袖をひっかけたり、身体をぶつけるなどの危険を減らすためにも、端部が壁方向に丸まったブラケット(金物)と組み合わせて設置するとよいでしょう。また先述しましたが、手首だけでなくヒジを使って身体を支えることもあります。手すりの形状と高さは、ご本人の歩き方の特徴に合わせることが肝心です。
ここも日常的に使われるものなので、手すりが必要になります。立ち座りの動作に適したL字型の手すりがよいでしょう。ただし玄関と違って腰をおろす位置が高いので、便器の高さに合わせ手すりを取り付けましょう。一般的には縦手すりの位置が便器の先端から20~30cm前方で、高さは座面から22~25cm程度が標準です。トイレに手すりを取り付ける場合は、トイレットペーパーと同じ位置になる場合もありますので、安全面を優先して取り付けましょう。
濡れてすべりやすい床で姿勢を安定させる、浴槽から立ち上がるときの補助など、浴室にも手すりは必要です。浴室に手すりを取り付ける場合には、浴室のタイプによって方法が2つに分かれます。まず浴室がユニットバスの場合。ユニットバスの壁はFRPなどの樹脂やプラスチック素材でできていることが多く、壁の厚さは非常に薄いものです。手すりを取り付けられる強度は、確保できないと思った方がよいでしょう。この場合には無理に穴を開けることなどはせず、ユニットバスメーカーのオプション品を使うことがおすすめです。次に、壁がタイルなどで作られた昔ながらの浴室ですが、こちらはインパクトドライバーとコンクリ用のドリルビットを使えば、穴を開けることはできます。ただしタイルを割ってしまったり、壁を崩してしまったりする可能性もあるので、こちらは業者に相談するのが無難です。
最後は階段への手すりの取り付けです。まずは、ご本人が階段を使って二階と一階を行き来することがあるのかが判断の基準になります。行き来することがないのであれば、手すりを取り付ける必要はないでしょう。どうしても取り付けなければならない場合は、上りと下りで利き手が逆になることを考え、手すりは階段の両側に付けたほうが良いでしょう。また、階段が直線であれば廊下と同じような付け方で大丈夫ですが、回り込むようになっている階段では、曲がり角の処理が難しくなります。このような場合には、強度や安全性、使い勝手を考え業者に依頼をしましょう。
手すりの取り付けを業者に頼むにせよDIYで取り付けるにせよ、家のリフォームには費用がかかります。ただしこのリフォームが、自宅介護のためのリフォームであれば、介護保険を使って費用を節約することができます。
その要件は、「介護認定で要支援1〜2、要介護1~5に認定された場合、自立しやすい生活環境を整えるための小規模な住宅改修工事に対して、その費用の9割(一定所得以上の場合は7割~8割)を住宅改修費用として認める」というものです。
そして本制度の上限は税込み20万円です。
つまり、税込み20万円の自宅介護のための工事を業者に依頼した場合、介護保険から18万円が支給され、2万円が個人の負担となります(支給額9割の場合)。この制度は、自宅介護のための手すりなどを購入した場合にも適用されるので、居住地域の役所窓口や担当ケアマネージャーに相談してみましょう。
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転倒による骨折をきっかけに、寝たきりになってしまう高齢者はたくさんいらっしゃいます。業者に頼むにせよDIYで取り付けるにせよ、手すりは専門メーカーの安心できる製品を選び、安全で快適な自立した生活を支援したいものです。
また、材料費を抑えたい方は住宅建材のアウトレットサイト(建材サルベージ)もありますので、利用してみてはいかがでしょうか。
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