202601/07
自宅内での転倒を防ぐために優先度が高い対策のひとつが「手すりの設置」である。費用負担を気にする人も多いが、介護保険を利用すれば自己負担は1〜3割で済む(所得区分により異なる)。
今回は、そもそも介護保険とはどういうものか、そして介護保険を利用して手すりを取り付けるにはどうしたらいいかを、介護保険による手すり設置に詳しいマツ六株式会社の森田氏に説明をお願いした。
介護保険制度とは、『要介護または要支援の状態にある人が、自宅でできる限り自立した生活を送れるよう、社会全体で支える仕組み』です。2000年に施行され、40歳以上の国民は被保険者として保険料を納める義務を負います。
運営財源の50%が保険料、残り50%が国や都道府県、市町村が負担する公費によって賄われています。

「介護サービスを利用できる人は、2種類に分かれます。
介護サービスを利用できる人は大きく2種類に分けられます。
一つは、第1号被保険者(65歳以上)です。これは、寝たきりや認知症などで常に介護を必要とする状態(要介護状態)と、常時の介護までは必要ないとしても家事や身支度等、日常生活に支援が必要な状態(要支援状態)の方を含みます。
もう一つは、第2号被保険者(40歳以上65歳未満)です。これは、初老期認知症、脳血管疾患など老化が原因とされる16種類の特定疾病(下図参照)により要介護あるいは要支援状態になった方を指します。
16種類の特定疾病 |
1.がん(※1) 2.関節リウマチ 3.筋萎縮性側索硬化症 4.後縦靱帯骨化症 5.骨折を伴う骨粗鬆症 6.初老期における認知症 7.進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病(※2) 8.脊髄小脳変性症 9.脊柱管狭窄症 10.早老症 11.多系統萎縮症 12.糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症 13.脳血管疾患 14.閉塞性動脈硬化症 15.慢性閉塞性肺疾患 16.両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症※1 医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。 ※2 パーキンソン病関連疾患 |
|---|
(1)相談
障害が残った状態で病院から退院したり、認知症が疑われたりする場合など介護サービスが必要だと感じられたら、まずは市町村担当課か地域包括支援センターに相談します。
市町村が設置主体となり、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等を配置して、3職種のチー ムアプローチにより、住民の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、その保健医療の向上及び福祉 の増進を包括的に支援することを目的とする施設である(介護保険法第115条の46第1項)。
主な業務は、介護予防支援及び包括的支援事業(①介護予防ケアマネジメント業務、②総合相談支援業務、③権利擁護業務、 ④包括的・継続的ケアマネジメント支援業務)で、制度横断的な連携ネットワークを構築して実施する。
▽
(2)訪問調査
市町村から委託を受けた訪問調査員が自宅へうかがい、日常生活や身体・生活環境について調査をします。
▽
(3)介護認定審査会
保険、医療、福祉の専門家などが訪問調査の結果と医師の意見書をもとに、どの程度の介護が必要かを全国一律の基準により審査します。
▽
(4)要支援・要介護の認定
介護保険の申請を行うと、原則として30日以内に、どの程度の介護が必要かが審査され、7区分(要支援1~2、要介護1~5)に分けて認定されます。
ただし、主治医意見書の作成や審査会のスケジュールによっては、30日を超える場合もあります。
認定の結果、要支援となった場合は、地域包括支援センターなどが『介護予防サービス計画書』を作成し、それに基づいて介護予防・日常生活支援総合事業のサービスが利用可能です。
要介護と認定された場合は、ケアマネージャーが居宅サービス計画書を作成し、その計画に沿って介護給付を受けることができます。
また、非該当と判定された場合でも、予防重視の観点から自治体の地域支援事業を利用できる場合も。例えば、転倒予防教室や運動・栄養指導といった取り組みが用意されています。ただし、対象者やサービス内容は自治体ごとに異なるため、詳細はお住まいの市町村に確認しましょう。

介護認定で要支援1・2、または要介護1~5に認定された場合には、自立しやすい生活環境を整えるための小規模な住宅改修工事に対して、介護保険から『住宅改修費用』として費用の一部が支給されます。
自己負担割合は、原則として1割負担の方は9割が給付されますが、所得の高い方などは2割負担(8割給付)、または3割負担(7割給付)となる場合があります。
支給限度基準額は要介護度にかかわらず一律20万円です。例えば、20万円の住宅改修を行った場合、自己負担が1割であれば18万円が介護保険から支給され、自己負担額は2万円です。ただし、支給限度額を超える工事費用については全額自己負担となります。
また、20万円の範囲内であれば複数回に分けて利用することも可能です。さらに、要介護度が大きく上がった場合や転居した場合などには、上限額が再設定され、新たに支給を受けられるケースもあります。

まず、多くの市町村で採用されているのが『償還払い』方式です。これは、被保険者が工務店などにいったん工事費用の全額を支払い、その後申請を行うことで、介護保険から給付分(原則9割、一定以上の所得がある場合は8割または7割)が払い戻される仕組みです。
一方で、市町村によっては『受領委任払い』方式を導入しているところもあります。この場合、被保険者は自己負担分(1~3割)のみを工務店等に支払い、残りの給付分は市町村から事業者に直接支払われます。
したがって、実際にどの方式が利用できるかは市町村によって異なるため、事前にご自身の市町村へ確認することが重要です。
利用者は費用の1~3割のみを事業者に支払い、保険給付される7~9割分は、利用者がその支給に関する受領権限を事業者に委任することで、市が直接事業者に支払って利用者の一次的な負担を軽減する制度。
設置する設備によって細かく決められています。下記をご確認ください。
| 改修の種類 | 原則として含まれる工事 | 関連する付随工事 | 例外・対象外となる工事/費用 |
|---|---|---|---|
| 手すりの取り付け | 廊下、トイレ、浴室、玄関、玄関から道路までの通路(玄関アプローチ)などに、転倒防止や移動補助のために手すりを取り付ける工事。 | 手すりの取り付けのための壁の下地補強。 | 便器に取り付ける、浴槽縁に取り付けるなど、建築工事を伴わない手すりは「福祉用具貸与」または「福祉用具購入費の支給」で利用できます。 |
| 段差の解消 | 居室、廊下、トイレ、浴室、玄関などの各室間の段差や、玄関から道路までの通路などの段差または傾斜を解消するために、敷居を低くしたりスロープを設置したり、浴室の床をかさ上げする工事。屋外でも道路に出るための通路部分であれば対象となります。 | 浴室の床の段差解消(浴室の床のかさ上げ)に伴う給排水設備工事。スロープの設置に伴う転落や脱輪防止を目的とする柵や立ち上がりの設置。 | 取り付け工事を伴わないスロープや段差解消機は「福祉用具の貸与」で利用できます。浴室用のすのこは「福祉用具購入費の支給」で利用できます。階段昇降機やホームエレベーターは対象となりません。 |
| 滑りの防止、移動の円滑化などのための床または通路面の材料の変更 | 居室を畳敷きから板張り、ビニール系床材に変更する工事。浴室の床を滑りにくいものへ変更する工事。通路面を滑りにくい舗装材へ変更する工事。 | 床材の変更のための下地の補修や根太の補強。通路面の材料の変更のための路盤の整備。 | 滑り止めマットを浴室その他に敷くだけでは対象となりません。 |
| 引き戸などへの扉の取り替え | 開き戸を引き戸や折れ戸、アコーディオンカーテンなどに取り替える工事。扉全体の取り替えや撤去のほか、ドアノブの変更や戸車の設置も含む。引き戸の新設も対象となる場合あり。重い戸を軽くする改修、門扉も対象となる。 | 扉の取り替えに伴う壁または柱の改修工事。 | 自動ドアにした場合、動力部分にかかる費用は対象となりません。 |
| 洋式便器などへの便器の取り替え | 和式便器から洋式便器へ取り替える工事。 | 便器の取り替えに伴う給排水設備工事(水洗化または簡易水洗化に係るものを除く)。便器の取り替えに伴う床材の変更。 | 据え置きの腰掛便座は「福祉用具購入費の支給」で利用できます。水洗化または簡易水洗化に係る給排水設備工事は対象となりません。 |
・住宅改修を伴わない、設計および積算のみの費用は対象となりません。
・「住宅改修費」の対象外の工事をあわせて行ったときは、対象部分の抽出、按分など適切な方法により、住宅改修費の支給対象となる費用を算出します。
・ 本人や家族などが自ら改修を行った場合は、材料の購入費のみが対象となります。
事前申請方式であり、大まかには『ケアマネージャー等に相談』『改修前に必要な書類を提出』『施工』『改修後に必要な書類を提出』という流れで進められます。
市町村によって必要な書類が異なる場合があるため、事前にご確認ください。

住宅改修申請手続きの流れのなかで、手すりが必要だと判断されて支給が決定された場合に住宅改修費が支給されます。
比較的簡単に工事できることから、つい介護保険を利用せずに先に工事をしてしまう方もおられるようですが、事前申請をすることなく工事を開始してしまうと、支給を受けることができなくなる可能性が高いのでお気を付けください。
具体的に手すりを設置している人数は分かりませんが、住宅改修については厚生労働省がデータを出しています。
2018年に全国で住宅改修費が給付された件数は総計46.1万件で、給付費は総額378.9億円でした。
立ったり座ったり移動したりする際に、壁やイスなどに手を添えているのであれば、ぜひ設置を検討してみてください。家のなかをよく見ると、そういった痕跡が見つかるかもしれません。例えば階段の壁にひんぱんに手を付いた形跡がある、などです。
介護保険をしっかり活用して実際に手すりを設置された方は、主に
“こんなに少ない負担で設置できるなんて知らなかった”
“不安が解消された”
“活動的になった”
という実感をお持ちです。
まずはお住まいの市町村の介護保険担当窓口にお気軽に問い合わせてみてはいかがでしょうか。
手すりを設置した方(またはそのご家族)のご感想を一部紹介
「うちの母は以前、家でじっとしていることが多く、外出もしたがりませんでした。
しかしアプローチに手すりがついたことで、外に出かける障害が取り除かれました。
今では外で友人とのおしゃべりを楽しんでいます」
「階段には直線部分に1本の手すりしかついていませんでしたが、登り口・降り口にも設置したことで、階段の登り降りが楽になりました。こんな風に手すりを取り付けられるなんて知らなかった」
「次の動作に移る際にバランスを崩して転びそうになったりして不安をいつも感じていました。でも、そのいつも転びそうになっていた場所に手すりが付いたことで、そういった不安を感じることはあまりなくなりましたね」
「私の父は、以前は自分一人でできたことができなくなり自信をなくしていたように感じます。手すりの設置後は一人でできることが増え表情が明るくなってきました」
手すりを設置することで、皆さん前向きに生活できるようになったとの声が多いです。介護保険を利用することで一人で悩まず、不安や悩みが解消されることを願っています。
市町村により独自に助成事業を行っているようで、金額や基準など異なるようです。
介護保険の併用が認められている場合もあれば、要介護認定で非該当となった方に対して行う予防給付もあるようです。お住まいの自治体に確認されるとよいと思います。
<東京都荒川区の場合>
身体機能の低下などにより日常生活に支障がある65歳以上の方(転倒防止給付のみ70歳以上の方)に対し、住宅改修費を助成することで、高齢者の在宅生活の自立を支援します。
支援や介護が必要な高齢者に対して介護保険の住宅改修の対象とならない改修費の助成を行う「住宅設備改修給付」「住宅設備等新設給付」と、介護保険の要介護認定で非該当となった高齢者に対して介護保険と同内容の助成を行う「住宅改修予防給付」、自宅内で転倒の危険性がある箇所に手すりを設置する費用を助成する「転倒防止用手すり設置給付」があります。
<神奈川県川崎市の場合>
身体機能の低下により支援・介護を必要とする高齢者が、住宅の改造を行うことにより、在宅で安全な生活が続けられるよう支援するとともに、介護者の身体的・精神的負担を軽減することを目的として、その改造費用の助成をします。
※必ず事前に御相談ください。(工事着手後に申請された場合は、助成を受けることができません。)
● 改造箇所…浴室、手洗所、居室、玄関、食堂、廊下、階段など(介護保険制度の住宅改修以外の工事)
● 助成対象基準限度額…100万円(所得に応じて利用者負担額が異なります。)
すでに多くの方が利用している「介護保険の住宅改修費の支給」。少ない負担で手すり設置などの住宅改修を行えますので、活用してみてはいかがでしょうか?
まずは介護保険の認定が必要かどうか市町村担当課か地域包括支援センターにご相談なさることをおすすめします。


介護保険を利用すれば自己負担1~3割の費用で手すりを付けられる!?

明日からすぐできる!自宅内の転倒事故を防ぐ10の方法

~手すり施工業者にこれだけは伝えておきたい!~ 設置場所別 手すりを付ける最適な方法とは!

「人生80年」でも健康なのは70年!?健康寿命を延ばすポイントとは

転倒事例を調査した研究者が伝えたい対策とアドバイス

「すべりにくい」プラス「クッション」?階段すべり止めを選ぶポイントとは (PR)

初めてのDIYでも簡単で頑丈に。介護にも役立つ手すり取付のコツを伝授!

手すりはここまで進化していた!てすりの老舗工場を取材!

14点以下は要注意!「転倒危険度診断」で今すぐチェック!

手すりはどこにつけるべき?場所別の設置箇所を網羅します!