201707/25
自宅内での転倒防止対策として優先して取り付けたい「手すり」。
設置費用を気にする人もいるだろうが、実は、介護保険を利用することで自己負担10%の費用で取り付けられる(一定所得以上の場合は20%)。
今回は、そもそも介護保険とはどういうものか、そして介護保険を利用して手すりを取り付けるにはどうしたらいいかを、介護保険による手すり設置に詳しいマツ六株式会社の森田氏に説明をお願いした。
「介護保険制度というのは、ひとことでいえば『介護が必要な人が、適切な介護サービスを受けられるように社会全体で支える仕組み』です。
2000年に施行され、40歳以上の人は介護保険に加入して、保険料を支払うことになりました。
運営に必要な経費の50%がその保険料で賄われています。
そして残り50%が国や都道府県、市町村が負担する公費です。」
「介護サービスを利用できる人は、2種類に分かれます。
一つは、第1号被保険者(65歳以上)。
寝たきりや認知症などで常に介護を必要とする状態(要介護状態)、または常時の介護までは必要ないが、家事や身支度等、日常生活に支援が必要な状態(要支援状態)の方です。
もう一つは、第2号被保険者(40歳以上65歳未満)。
初老期認知症、脳血管疾患など老化が原因とされる16種類の病気(下記参照)により要介護状態や要支援状態となった方を指します。」
老化が原因とされる 16種類の病気 |
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(1)相談
「障害が残った状態で病院から退院したり、認知症が疑われる場合など介護サービスが必要と感じられたら、まずは市町村担当課か地域包括支援センターに相談します。」
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(2)訪問調査
「市町村から委託を受けた訪問調査員が自宅へ伺い日常生活の状態などについて聞き取り調査をします。」
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(3)介護認定審査会
「保健、医療、福祉の専門家などが訪問調査の結果と医師の意見書をもとに、どの程度の介護が必要かを全国一律の基準により審査します。」
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(4)要支援・要介護の認定
「申請から30日以内にどの程度の介護が必要か7区分(要支援1~2、要介護1~5)に分けて認定されます。
認定されると、要支援の場合は地域包括支援センターによって介護予防プランが作成され、それに沿った予防給付が利用できます。
要介護の場合は、ケアマネージャーによるケアプランに従って介護給付を受けることができます。
また、予防重視の観点から、非該当者であっても、別途地域支援事業としてのサービス(転倒予防教室や栄養指導など)が用意されています。」
「介護認定で要支援1・2、要介護1~5に認定された場合、自立しやすい生活環境を整えるための小規模な住宅改修工事に対して、その費用の9割(一定所得以上の場合は8割)が「住宅改修費用」として支給されます。
そして、要介護度に関係なく20万円という上限があります。
例えば、支給限度額いっぱいの20万円の住宅改修を行った場合は、介護保険から18万円が支給されるため、自己負担額は2万円ということになります。支給限度額を超えた工事費用は自己負担となります。」
「支給方法は、被保険者が工務店等の事業者に費用を支払った後に、市町村から被保険者へ費用の9割(一定所得以上の場合は8割)が支給される、いわゆる『償還払い』の形式です。
ただ、別途『受領委任払い』という方式を採用している市町村もありますので、ご自身の市町村にご確認ください。」
「設置する設備によって、細かく決められています。下記をご確認ください。」
(2)床段差の解消
居室、廊下、便所、浴室、玄関等の各室間の床の段差及び玄関から道路までの通路等の段差又は傾斜を解消するためのもの。(敷居を低くする工事、スロープを設置する工事、浴室の床のかさ上げなど)
【対象外】
工事を伴わないスロープは「用具貸与」の対象。浴室内すのこの設置は、「用具購入」の対象。また、昇降機、リフト、段差解消機等動力により段差を解消する機器を設置する工事は対象外。
(3)滑りの防止および移動の円滑化のための床または通路面の材料の変更
居室においては畳敷きから板製床材やビニル系床材等への変更、浴室においては床材の滑りにくいものへの変更、通路面においては滑りにくい舗装材への変更等。
(4)引き戸等への扉の取替え・引き戸等の新設
開き戸を引戸、折り戸、アコーディオンカーテンなどに取替えるといった扉全体の取替えのほか、扉の撤去、ドアノブの変更、戸車の設置、引き戸を新たに設置する工事。
【対象外】
引戸などへの扉の変更にあわせて自動ドアとした場合、自動ドアの動力部分の設置は保険給付の対象に含まれない。
(5)和式便器から洋式便器への取り替え、便器の位置・向きの変更
【対象外】
腰掛便座(和式便器の上に置いて腰掛式に変換するもの、洋式便器の上に置いて高さを補うもの、電動式またはスプリング式で便座から立ち上がる際に補助できる機能を有しているもの、移動可能な便器)は、保険が給付される「福祉用具の購入」の対象。
和式便器から暖房便座・洗浄機能などが付加されている洋式便器への取替えは「住宅改修」の保険給付対象だが、すでに洋式便器である場合、これらの機能などの付加は「住宅改修」の対象とならない。
(6)その他(1)~(5)の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修
それぞれ以下のようなものが想定される。
(1)手すりの取付けのための壁の下地補強など。
(2)浴室の床段差解消(浴室の床のかさ上げ)に伴う給排水設備工事、スロープの設置に伴う転落や脱輪防止を目的とする柵や立ち上がりの設置など。
(3)床材の変更のための下地の補強や根太の補強又は、通路面の材料の変更のための路盤の整備など。
(4)扉の取替えに伴う壁または柱の改修工事など。
(5)便器の取替えに伴う給排水設備工事(水洗化または簡易水洗化に係るものを除く)、便器の取替えに伴う床材の変更など。
※市町村により、支給対象が多少異なる場合があります。詳しくはお住いの市町村の介護保険担当窓口にご相談ください。
「事前申請制度となっています。
おおまかな流れとしては『ケアマネージャー等に相談』、『改修前に必要な書類を提出』、『施工』、『改修後に必要な書類を提出』となります。
市町村によっては必要な書類が違う場合がありますので、確認をしてください。」
「住宅改修申請手続きの流れのなかで、手すりが必要だと判断されて支給が決定されましたら住宅改修費が支給されます。
比較的簡単に工事できることから、つい介護保険を利用せずに先に工事をしてしまう方もおられるようですが、事前申請をすることなく工事を開始してしまうと、支給を受けることができなくなる可能性が高いのでお気を付けください。」
「具体的に手すりを設置している人数は分かりませんが、住宅改修については厚生労働省がデータを出しています。
最新データとなる平成26年度でしたら、全国で47万件の住宅改修費の支給事例があり、約474億円が支給されています。」
「やはり立ったり座ったり移動したりする際に、壁やイスなどに手を添えているのであれば、ぜひ設置を検討してみてください。
家のなかをよく見ると、そういった痕跡が見つかるかもしれません。例えば階段の壁にひんぱんに手を付いた形跡がある、といったことです。」
「介護保険をしっかり活用して実際に手すりを設置された方は、主に
“こんなに少ない負担で設置できるなんて知らなかった”
“不安が解消された”
“活動的になった”
という実感をお持ちです。
ともかく一度、ご自身の市町村役場に気軽に問い合わせてみてください。」
手すりを設置した方(またはそのご家族)のご感想を一部紹介
「うちの母は以前、家でじっとしていることが多く、外出もしたがりませんでした。
しかしアプローチに手すりがついたことで、外に出かける障害が取り除かれました。
今では外で友人とのおしゃべりを楽しんでいます。」
「階段には直線部分に1本の手すりしかついていませんでしたが、登り口・降り口にも設置したことで、階段の登り降りが楽になりました。
こんな風に手すりを取り付けられるなんて知らなかった。」
「次の動作に移る際にバランスを崩して転びそうになったりして不安をいつも感じていました。
でも、そのいつも転びそうになっていた場所に手すりが付いたことで、そういった不安を感じることはあまりなくなりましたね。」
「私の父は、以前は自分一人でできたことができなくなり自信をなくしていたように感じます。
手すりの設置後は一人でできることが増え表情が明るくなってきました。」
手すりを設置することで、皆さん前向きに生活できるようになったとの声が多いです。
これから手すりの設置をお考えの方は、介護保険の利用で費用面の悩みや不安も一緒に解消されることを願います。
「市町村により独自に助成事業を行っているようで、金額や基準など異なるようです。
介護保険の併用が認められている場合もあれば、要介護認定で非該当となった方に対して行う予防給付もあるようです。
ご自身の自治体に確認されるとよいと思います。」
<東京都荒川区の場合>
身体機能の低下などにより日常生活に支障がある65歳以上の方に対し、住宅改修費を助成することで、高齢者の在宅生活の自立を支援します。
支援や介護が必要な高齢者に対して介護保険の住宅改修の対象とならない改修費の助成を行う「住宅設備改修給付」と、介護保険の要介護認定で非該当となった虚弱な高齢者に対して介護保険と同内容の助成を行う「住宅改修予防給付」があります。
<神奈川県川崎市の場合>
身体機能の低下により支援・介護を必要とする高齢者が、住宅の改造を行うことにより、在宅で安全な生活が続けられるよう支援するとともに、介護者の身体的・精神的負担を軽減することを目的として、その改造費用の助成をします。
※必ず事前に御相談ください。(工事着手後に申請された場合は、助成を受けることができません。)
・改造箇所…浴室、手洗所、居室、玄関、食堂、廊下、階段など(介護保険制度の住宅改修以外の工事)
・助成対象基準限度額…100万円(所得に応じて利用者負担額が異なります。)
すでに多くの方が利用している、『介護保険の住宅改修費の支給』。
自己負担としては非常に安い値段で設置できるので、ぜひ利用してください。
まずは介護保険の認定が必要な状況かどうかを、市町村担当課か地域包括支援センターにご相談を。
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