201704/17
歩行や動作を円滑にし、転倒防止のために手すりを設置する家庭が増えている。
しかし、一口に手すりと言ってもシーンに合わせて様々な種類があることをご存知だろうか。
日頃多くの人が利用する役所、病院、駅舎などの建物の手すりは利用する人の使いやすさを追求し、研究開発が進んでいる。
家庭でもニーズに合った正しい材質・形状の手すりを正しい位置に取り付けることで、より高い事故防止効果を期待することができるようになる。
今年で創業85年を迎えるナカ工業は、手すりの使いやすさを追求し続け、世界で初めて金属の手すりを樹脂でコーティングし、その後も様々な種類の手すりを開発している。
現在では、世界中に工場を持ち、同社製の手すりの設置は、年間1200kmにもなるそうだ。1歩を70cm、1日1万歩歩くとして1日の移動距離は7km。ナカ工業が1年間に設置する手すりをすべて使おうとすると、170日間は手すりから手を離せない計算だ。
今回はそんなナカ工業にお邪魔してお話を伺った。
ナカ工業株式会社 営業企画部販売促進課長 東川尚樹さん
手すりは大きく分けると2種類に分類できる。
1つは、階段・廊下やスロープを歩くとき、手すりに沿って手を滑らせながら使う方法。もう1つは、浴室、トイレ、玄関で、体の上下移動や短い距離の歩行の補助として使う方法。
前者で使われるのを歩行補助手すり、後者で使われるのを動作補助手すりと呼ぶ。
歩行補助手すりは滑らかに連続した長尺の手すりである。主には、床面と平行の手すりを壁に設置する。
動作補助手すりは短い手すりで、I型手すりとL型手すりに分けられる。I型手すりにはトイレの立ち座りなどの体の上下移動に役立つ縦手すりと、立位、座位の姿勢維持に役立つ横手すりがある。L型手すりは縦手すりと横手すりを組み合わせたものだ。
それぞれ、体を支えたり、姿勢を保持したり、ぐっと掴んで立ち上がったりするためのものである。
歩行補助手すり、動作補助手すりのそれぞれについて、使う人の使いやすさと安全を追求し、様々な形状、材質の手すりが開発されてきた。
動作補助手すりは手をまわしやすい円形の手すりが一般的だ。
歩行補助手すりも円形が一般的だが、円形は握りやすい反面、滑りやすいというデメリットがある。
多角形の方が滑りにくいが、四角形の手すりは握ったときに角が手に食い込んでしまい、痛みを感じることがある。そこで、人が手を丸めた時の形に似ている八角形の手すりが開発された。
他に、手すりに触れる手の表面積が大きくなる楕円形手すりも滑りにくいため歩行補助手すりに適している。
また、手すりに手や肘を押し付けながら歩くことのできる三角形の手すりも開発されている。
形だけでなく、手すり内部の構造や表面の加工にも、驚くべき工夫がなされている。
従来の金属製の手すりは、夏は熱く、冬は冷たくなってしまう上、固く、滑りやすいものだった。
金属を樹脂でコーティングした手すりは握ったときに冷たさ、熱さを感じにくくなる。
さらには、内部材にも軟質樹脂を使うことで、適度な弾力を保ちつつ、まるで人の手を握っているかのような柔らかさを感じることができるものも登場している。これによりユーザーはよりしっかり力強く手すりを握ることが可能になり、より多くの力を手すりにかけることができるようになる。
内部材だけでなく、内部構造でも手すりは進化を遂げている。芯材とその周辺の間に空間を作ることでクッション性を保持しているものも登場した。万一の衝突時も衝撃を和らげることができ安心だ。
また、トイレや浴室などに設置される動作補助手すりは濡れた手で触れられることが多いため、滑りにくくする工夫が必要になる。
握った際の指側の表面にエンボス加工を施すことにより、握り部分が凸凹になり、より滑りにくいものもある。
さらに、手すりの表面に抗菌剤を配合しているものもある。 高温多湿な日本の建物では約57種類の菌が発生するが、その環境下で不特定多数の人に触られる手すりで何が起きるかは容易に想像できるだろう。
抗菌剤を配合することで菌の活動を低下させ増殖を抑制することができる。
現在も手すりは進化し続けており、安心、安全だけでなくデザイン性も求められるようになってきた。
歩行補助手すりには、壁と手すりを接続する金具(ブラケット)がないブラケットレス手すりがある。ブラケットレス手すりはデザインを主張しない手すりとして開発され、どんな壁材にも調和するシンプルなデザインになっている。設置時にも、ブラケット付き手すりと比較して、壁側の補強を避けることのできる場合も多く、取り付けられる場所の選択肢も広い。
さらに、LED照明と組み合わせた歩行補助手すりは、夜間でも安全に歩行することができるだけでなく、美しい空間の演出にも効果的だ。屋外にも設置可能で、夜景スポットに設置されることもある。
手すりの適切な取り付け高さは利用する人によって異なる。本人の使いやすい高さに合わせて75cmから80cmの間に取り付けるのが一般的だ。
設置する壁の具合も重要なポイントで、しっかりとした壁に取り付けなければ逆に危険になってしまう。設置は知識のある専門業者に行ってもらう方が安心ではあるが、最近ではDIYで自分で取り付ける家庭も増えている。
取付自体は簡単で、数時間で完了する。
技術の進歩と研究の積み重ねにより、ただの金属製の手すりはここまで進化していた。
是非、あなただけの1本を見つけていただきたい。
取材:ナカ工業株式会社
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