202309/29
介護は、日常生活を自力で営むことが難しい方のサポートをすることです。
1日を通して要介護者の身のまわりをお世話するので、当然お風呂での介護も必要となります。
体の汚れをさっぱりと洗い流し、心もホッとできるお風呂は、癒しの時間でもありますよね。
とはいえ、入浴介助をおこなう側にとっては力も気も使う作業であり、なかなか「癒しの時間」とは言い難いものです。
本記事では、そんなお風呂での介護を少しでも快適に、スムーズにおこなえるよう、必要な準備や手順、ポイントを解説していきます。
介護者と要介護者がお互いに入浴タイムを心地よい時間とできるよう、参考にしてみてください。
入浴介助とは、自力での入浴が困難な方に対して、介護者がお風呂での介助をおこなうことです。
要介護者の身体の清潔や健康を保ち、また身体的・精神的な緊張・苦痛をやわらげる目的があります。
皮膚が汚れたままだと、床ずれや感染症の要因ともなるため、介護において重要な役割を担っています。
訪問入浴介護などのサービスもありますが、在宅介護をおこなっている場合、多くは要介護者の身内の方が、自宅のお風呂にて介助に入る形となるでしょう。
要介護者の体の支え方や、入浴前後の過ごし方、必要な用品などを心得ておかなければ、重大な事故にもつながりかねません。
入浴介助に際して備えるべきことをしっかりと頭に入れておきましょう。
お風呂での介護に備えてやっておくべきことはたくさんあります。
介護者・要介護者共に体力を要する入浴介助において、準備なしにおこなうことは危険です。
入浴の前には、最低限以下の3つをおこないましょう。
1つずつ解説していきます。
入浴の前には、要介護者の体調チェックが欠かせません。
チェックすべき項目は、以下のとおりです。
上記をチェックし、問題がないようなら入浴してもOKです。
少しでも体調に異変や違和感があるときは入浴は控え、蒸しタオルで体を拭くなどの対応に留めましょう。
入浴介助では、さまざまなグッズが必要となります。
以下を参考に、必要なものを準備しましょう。
・バスタオル
サイズが大きく吸水性の高いもの、時間短縮できるもの
・着替え(オムツや尿取りパッド含む)
綿素材など汗を吸うものを用意しておくとよい
・ボディソープや石けん
泡で出てくるボディソープがおすすめ
・ボディタオルやスポンジなど
要介護者の肌に優しいものを選ぶ
・入浴を補助する介護用具
シャワーチェアや滑り止めマットなど
・保湿剤や病院などから処方されている軟膏
入浴後の清潔な肌に塗る。高齢者はとくに乾燥しやすいので保湿剤も必要。床ずれ防止にも保湿剤は有効。
着替えはすぐに着用できるよう着る順番に置いておく、などの工夫も大切です。また、使用するグッズはすべて清潔なものを用意しましょう。
必要なグッズの準備を万全にするだけでも、快適なバスタイムにちかづきます。
入浴介助に必要なのは、なにも要介護者用のグッズだけではありません。介護する側にも相応の身支度が求められます。
入浴介助の負担を軽減する意味でも、以下の物を用意しておくと便利です。
・撥水・防水加工のエプロン
入浴介助時の濡れ・汚れを防ぐ
・サンダル:滑り止め加工がされたものがおすすめ。お風呂掃除用の長靴タイプなどもよい。
・ゴム製手袋:ホームセンターなどでは入浴介助用の手袋も販売されている。自身の手に合うサイズのもの、滑らないものがよい。
上記を身につけた上で入浴介助に臨みましょう。
先にお風呂での介護に必要なグッズとして触れた「入浴を介助する介護用具」にも、さまざまな種類があります。
介護用品によっては介護保険の適用となり、安価で利用できるものも少なくありません。
備えておくだけで、要介護者の入浴や介護者の入浴介助にかかる負担を共に軽減してくれるので、要チェックです。
入浴介助の際には、主に「シャワーチェア」「滑り止めマット(すのこなども)」「手すり」「踏み台」などの介護グッズがあるとよいでしょう。
シャワーチェアは、洗い場に腰をおろしたり椅子から立ち上がったりということが難しくなってきた方や、転倒などが心配される方をサポートする、入浴用介護用品です。
背もたれがついたもの、肘あてがついたもの、腰あてがついたもの、陰部が洗いやすいU型座面のものなどさまざまなタイプがあるため、要介護者の状態に合わせて選びましょう。
頻繁に使うものなので、浴室内に置いていても邪魔にならぬよう、折り畳み式のものがおすすめです。
また、転倒防止のためには、滑り止めマットや手すりも欠かせません。
段差を少しでも小さくするための踏み台も用意しておくとよいですね。踏み台は、浴槽に浸かる際にも便利です。
そのほか、要介護者の状況に合わせて「バスボード」「入浴用介助ベルト」「シャワーキャリー」「バスリフト」などの利用も検討してみてください。
バスボードは、浴槽の両ふちにわたすボードのことです。
バスボードに座ってから浴槽に入るため、安定した姿勢での入浴が可能となります。
浴槽をまたぐのが困難な方におすすめです。
入浴用介助ベルトは、要介護者の体に装着し、入浴時の移乗をサポートするものです。
ベルトを装着することで、介護者の負担を軽減させ、安全な入浴を実現します。
要介護者の体に負担がかからないよう、ソフトで肌あたりのよい素材のものを選びましょう。
シャワーキャリーとは、浴室や脱衣所など水まわりで使用できる浴室用車いすです。
シャワーキャリーに座ったままシャワーを浴び、洗うことができます。
自力で洗い場に向かうことが困難な方におすすめです。
バスリフトは、浴槽内昇降機のことです。
電動でシートが昇降し、浴槽の出入りなどをサポートします。電気工事や設置工事は必要ありません。
入浴介助に必要なものを揃えたら、実際に介助をおこなっていきます。
要介護者の体に負担をかけないよう、丁寧に進めていきましょう。
入浴介助の手順は、以下のとおりです。
順を追って解説します。
入浴介助中に場を離れたり、慌てたりすることがないよう、事前準備はしっかりと済ませておきましょう。
入浴前には、以下の準備を整えます。
とくに体調のチェックは重要です。
先述したチェック項目をしっかりと確認してください。
事前準備が万全に整ったら、いよいよ入浴介助に移ります。
まずは、お湯の温度の確認が必要です。シャワーの温度が適温か、浴槽のお湯が適温か、実際にお湯に触れて確認します。
シャワーの温度は、38~40度ほどが目安です。若干ぬるめかな?と感じる程度が適温といえます。熱すぎず、ゆったりとリラックスして浸かれる温度に設定しましょう。
可能であれば、要介護者本人にも確認してもらうことをおすすめします。
お湯の温度がちょうどよければ、脱衣します。
転倒などしないよう要介護者の体を支え、焦らず脱衣できるように配慮しましょう。
浴室に入ったら、洗い場で要介護者の体を洗っていきます。「足からお湯をかけていきますね」などと声掛けをしながら、ゆっくりとお湯をかけましょう。
お湯をかける際は、体に負担をかけないよう、心臓に遠い足元からかけるようにすることが基本です。
原則として、頭から足に向かって順番に洗っていきます。 要介護者の負担とならないよう優しく丁寧に、しかし時間をかけすぎないように手早くおこなっていくことが大事です。
洗う順番については、後ほど詳しく解説します。
全身を洗い終わったら、要介護者の体を支えながら、ゆっくりと湯船に浸からせます。
湯船に浸かる際は、要介護者の状況に応じて、踏み台や手すり、バスボード、バスリフトなどを使用しましょう。
のぼせないよう、よく観察し、短めの時間に留めることが大切です。
体が温まったら、湯船から出る際や浴室から脱衣所に移動する際など、滑らないよう足元に十分な注意をはらいながら、浴室を後にします。
脱衣所では椅子に座らせるなどして安定した姿勢で、水分を拭き取りましょう。 大きめのバスタオルで手早く、そして確実に水分を拭き取っていきます。
転倒防止のため、足裏までしっかりと拭うことがポイントです。
全身の水分をしっかりと拭き取れたら、清潔な衣類に着替えていきます。要介護者には座ってもらい、無理のない姿勢でおこないましょう。
この際、必要に応じて保湿剤や軟膏を塗ります。
着替えが落ち着いたら、水分補給が必要です。
入浴時は想像以上に水分が失われているため、本人が要らないといっても、水分を摂ってもらうようにしてください。
最後に、入浴後の体調チェックをおこないましょう。
体調チェックは、入浴前と同様に、呼吸や血圧に異常はないか、顔色はおかしくないか、脈拍は正常か、傷や皮膚の変色はないか、など念入りに確認します。
本人にも、自覚症状などはないか確認が必要です。
また、入浴は体力を消耗するので、入浴後はよく休んでもらいましょう。
入浴介助では、洗う順番も大事です。
順番を間違えてしまうと、心臓に負担をかけてしまいかねません。
体を洗う順番は、髪→上半身→下半身と、基本的には上から下へ向かって洗っていきます。
浴室に入ったら、まずはゆっくりと足元からお湯をかけ、体を慣らしましょう。
その後、髪から洗っていきます。耳に水が入らないよう注意しながら予洗いし、指の腹を使って優しくシャンプーしましょう。
シャンプーし終えたら、しっかりとお湯で洗い流します。 このとき、シャンプーハットがあると便利です。
髪を洗い終えたら、顔から首、指先から腕、上半身と洗っていきます。 ボディタオルやスポンジを使い、丁寧に優しく洗い上げましょう。
耳の後ろ、脇の下、胸の下など洗い残しのないようにしてください。
上半身を洗い終えたら、足先からふくらはぎ、太もも、お尻と、今度は下から順に洗っていきます。
脚の付け根や足の指の間、膝の裏側など洗い残しのないように気をつけてください。
ADL(日常生活動作)の維持のためにも、自分で洗える箇所は自分で洗ってもらうこともポイントです。
上から下に、という順番はあくまで「基本」なので、どこから洗ってほしいなど本人の希望があれば、そちらを優先しましょう。
入浴介助時には、いくつかの注意点・ポイントがあります。それらをしっかりと守ることで危険も防止できるので、ぜひ確認してください。
入浴前、入浴中、入浴後と3つのシーンにわけて解説していきます。
急な温度変化は、血圧変動やショック状態などヒートショックを引き起こす可能性があります。そのため、浴室と脱衣所を温めておくことは重要なポイントです。
とくに冬場はヒートショックを起こしやすいので、気をつけましょう。
貧血や脱水、または消化不良を予防するため、空腹時や食事後の入浴は避けるのがベターです。
体調チェックも念入りにおこなってください。
要介護者の表情や発言などをよく観察し、少しでも異変を感じれば入浴はやめ、清拭に留めましょう。
次に、入浴中に気をつけたい注意点・ポイントをご紹介します。
体を洗う際に使用する椅子にもお湯をかけ、温めておきましょう。
何か動作をおこなう際には、逐一声をかけるようにします。要介護者が次に何がおこなわれるのかわかる状態にしておくことが大事です。
お湯をかける際は、足元からにしてください。いきなり上半身からお湯をかけると、ショックを起こしかねません。
また、のぼせてしまわぬよう、お湯に浸かる時間は5分を目安にし、長く入りすぎないよう注意が必要です。
一つひとつの動作をゆっくりと丁寧におこないましょう。
最後に、入浴後に注意したいポイントを見ていきます。
浴室を出たら、風邪や転倒を防ぐため、全身の水分はしっかりと拭きとってください。
脱水を起こさぬよう、入浴後にはしっかりと水分補給をおこないましょう。
要介護者の状況に応じて、保湿や爪切りなど身支度を整えます。入浴後は肌や爪が通常よりもやわらかくなっているため、有効です。
ただし、入浴後の耳かきは耳を傷つけてしまう可能性があるため、控えましょう。
着替えなどが落ち着いたら、血圧や体温を計り、異常がないかのチェックも欠かせません。
以上、すべてに気を配るのはなかなか大変かもしれませんが、どれも安心・安全な入浴介助のために必要なポイントです。
しっかりと守り、介護者・要介護者が共に気持ちよく入浴を終えるよう心がけましょう。
家族で入浴介助をおこなうのが困難な場合は、訪問入浴サービスを利用できます。
サービスを利用する際には、地域包括支援センターやケアマネージャーに相談し、ケアプラン作成後、訪問入浴サービスを契約する、という流れになります。
訪問入浴サービスでは、看護師を含む2~3名で入浴介助をおこなうのが基本です。
訪問入浴サービスを受けられるのは、以下の条件を満たす者とされています。
訪問入浴サービスには介護保険が適用されるため、費用面もご安心ください。
費用負担は、所得に応じて1割~3割負担となっています。具体的な自己負担費用は、以下のとおりです。
このほか、初回加算や認知症専門ケア加算などもあるため、詳しくは厚生労働省の資料3ページ目をご参照ください。
本記事では、お風呂での介護に必要な準備やグッズ、また洗う順番や注意点などについて解説してきました。
入浴は、1日の疲れをとり、体を清潔かつ健康に保つために必要なものです。
筋肉や心の緊張もほぐすため、関節痛などの痛みにも効果があるとされています。
質のよい入浴は入眠をスムーズにできるというメリットもあるため、できるだけリラックスしてお湯に浸かってもらいたいものですよね。
入浴介助の際には、今回ご紹介した備えやポイント、手順を参考にしてみてください。
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