202309/29
これから在宅介護を開始する、もしくは近い将来在宅介護に携わるかもしれない、という方は、どのような準備が必要なのか、さまざまな情報を集めているのではないでしょうか。
高齢化社会を象徴するような日本では、介護を必要とする方の人数は年々増えています。
公益財団法人である生命保険文化センターの「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、身内の介護をおこなった(おこなっている)場所は、「自分の家」が40.2%で最多です。「親や親族の家」の16.6%を合わせると、その割合は半数を超えます。
いざ在宅での介護が必要となったとき、何をどのように準備していけばよいのでしょうか。
本記事では、在宅介護に際して準備すべきことを、「制度やサービス」「介護用品・グッズ」「住環境」「費用」「協力体制」と5つの観点からご紹介していきます。
在宅介護をおこなう際のポイントについても解説するので、ぜひ最後までお付き合いください。
参考:2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査|公益財団法人 生命保険文化センター
在宅介護とは、老人ホームや病院などの施設ではなく、住み慣れた自宅でおこなう介護のことです。
馴染みのある場所にて、主に家族が介護することで、要介護者に安心感を与えられるでしょう。
基本的には要介護度がそこまで高くない方を介護するのに向いています。
一方で、介護にあたる家族には負担がかかることも事実です。 介護には休日もないため、心身共に疲れてしまいがちなことは否定できません。
訪問介護やデイサービスなどと上手く組み合わせ、賢くおこなっていくことが大切です。
在宅介護にあたって、どのような準備をしたらよいのか、まずは制度やサービスの面から見ていきましょう。
介護保険の適用によって、比較的安価に利用できるサービスは多岐にわたります。
介護サービスを適切に受けるために必要な準備は、以下の2点です。
1つずつ解説していきます。
要介護認定とは、介護サービスの必要度を判断するものです。 「要支援1~2」と「要介護1~5」の7段階に区分されます。
介護保険サービスを利用したければ、まずは要介護認定を受け「要介護」「要支援」判定をもらわなければなりません。
要介護認定は、コンピュータによる一次判定と、介護認定審査会での二次判定を経ておこなわれるのが一般的です。
要介護認定の申請は、認定希望者本人が居住している市区町村の窓口にておこないます。
申請に必要なものは、主に以下のとおりです。
要介護認定の申請から認定までの流れとしては、以下のようになります。
申請から認定までは1か月ほどかかる場合もあるため、早めの準備が必要です。
介護保険サービスの内容についても、しっかりと認識しておきましょう。
介護保険とは、社会全体で介護をサポートすることを目的として創立された「公的保険制度」です。
原則として、65歳以上の第1号被保険者で要介護認定、要支援認定を受けた者が、介護サービスを利用した場合に、負担した費用の一部を保障してもらえます。また、40歳以上65歳未満の医療保険に加入している方で16種の特定疾病と診断された方も、介護保険の対象です。
介護保険を利用したい場合は、利用者の居住がある市区町村窓口や地域包括支援センターに申請しましょう。
本人が申請できない場合は、代理の者が申請することも可能です。
基本的に要介護(要支援)認定を受けている方は、等しく介護保険のサービスを利用できます。
介護保険サービスでは、訪問型のサービスや通所型のサービス、介護タクシーの利用、福祉用具貸与、特定福祉用具購入、さらには住宅改修など、実にさまざまなサービスを受けられます。
参考:介護保険とは|厚生労働省
在宅介護では、あらゆるアイテムが必要となります。介護者・要介護者共に快適な在宅介護となるよう、それらの用品も準備しなければなりません。
ここでは、以下の2パターンにわけて、介護用品やグッズをご紹介します。
どのシーンでどのアイテムを使うのかイメージしながら、確認していきましょう。
介護保険サービスでは、指定された福祉用具の貸与や、特定福祉用具購入に対する費用補助があり、それらを利用すると費用の1割~3割負担で介護用品を準備できます。
ただし、最初に自身で全額を負担し、後から補填される形となるため、ご注意ください。
介護保険サービス内で福祉用具貸与としてレンタルできるものは、以下の13品目です。
利用の流れは、以下を参考にしてください。
福祉用具貸与では、要介護度によって利用できるものが異なり、給付限度額も異なります。
一方、特定福祉用具購入の対象品目は、以下の6品目です。
利用限度額は、毎年4月1日から翌3月末日までの1年間で、上限10万円(税込)とされています。限度額を超えた分は全額自己負担となるため、ご注意ください。
上限金額までの間で、購入費の7割~9割(所得により異なる)が支給されます。 利用できるのは、原則として在宅の要介護1~5、または要支援1~2の方です。
利用の流れとしては、以下のようになります。
以上、介護保険が適用される品目と申請方法をしっかりと確認し、必要に応じて備えるようにしましょう。
参考:福祉用具・住宅改修|厚生労働省
参考:福祉用具貸与(参考資料)|厚生労働省
先述したように、在宅介護に必須なものは、介護保険サービス内で大体はまかなえてしまいます。
自己負担では、細々とした身のまわりのグッズや、要介護者の状態に合わせて必要なものを揃えていきましょう。
たとえば、以下のようなものが挙げられます。
しかし、実際に在宅介護が始まってみなければイメージできないものなども少なくありません。
都度揃えていくことも考慮し、メモなどを常に持ち歩く習慣をつけるとよいでしょう。
在宅で介護するならば、住環境を整えることもマストといえます。
要介護者の目線に立ってみなければ気づけない不便さも多々あるものです。
上記の2点をポイントに、解説していきます。
在宅介護では、要介護者が生活するスペースは、ある程度限られてくるはずです。
まずは、要介護者が主に過ごす部屋を決めましょう。
その際、以下の点に注意が必要です。
要介護者が自力でできることをなるべく維持する意味でも、介護者の負担を減らす上でも、上記の3つは重要視したいポイントといえます。
メインの生活スペースを決定したら、その環境を整えましょう。
寝床は、昼夜の区別がつくよう、窓の近くが望ましいです。また、寝床周りには必要なものを配置し、生活しやすくします。
メインの生活スペースが整ったら、そこから廊下、トイレ、玄関、お風呂など移動する動線を考え、環境を整備します。
余計なものは置かず、要介護者がつまずいたり、要介護者の歩行を妨げたりすることを防ぎましょう。
要介護者の状態や住環境次第では、住宅の改修をおこなったほうがよい場合もあります。
たとえば、スロープや踏み台を設置して段差をなくしたり、照明をリモコン式に替えたり、といった作業が必要なこともあるでしょう、
どんな場面であっても、要介護者の目線でおこなっていくことが大事です。
必要ならば、リフォームなど住宅の改修もおこないましょう。ただし、要介護1程度なら、ちょっとした工夫でまかなえる部分は大きいので、住宅改修は慎重におこなってください。
バリアフリーにするための改修としては、以下のようなものが挙げられます。
中には、DIYで賄えるものもあります。
バリアフリー改修をおこなう場合も、介護保険サービスの適用が可能です。20万円を上限とし、工事費用の1割~3割負担で改修できます。
在宅介護にあたっては、ある程度の費用も担保しておかなければなりません。
とはいえ、どの程度の費用がかかるのか、幾らを目安に用意しておけばよいのか、なかなか予測もつかないかと思います。
そこで、公的なデータも参考にしながら、以下の観点で確認をしていきましょう。
費用相場を把握した上で、制度を賢く使っていくことが大事です。
最初にもご紹介した公益財団法人・生命保険文化センターの2021(令和3)年度「生命保険に関する全国実態調査」(2021年12月発行)によると、住宅改修や介護用ベッド購入など、介護にかかる一時費用の平均額は74.4万円とされています。
また、月額費用の平均は8.3万円です。そのうち、在宅で介護をおこなう場合の月額平均は、4.8万円となっています。ちなみに、施設介護の月額平均は12.2万円と、在宅介護と比較し割高です。
介護にかかる一時費用は在宅と施設で分けていないため一概には言えませんが、先にご紹介した介護保険サービスの適用をもってしても、上限額があるためにその多くをまかなえるとは言い難い現状があります。
ランニングコストとして毎月5万円弱ずつかかっていくことを考えても、在宅介護を始める前に一定の担保が必要ということがおわかりいただけるのではないでしょうか。
在宅介護には相当の費用が発生するということがわかりました。
では、その費用をなんとか抑えていく方法はないのでしょうか?
先にも少しご紹介しましたが、介護保険によって費用負担の軽減が期待できる制度は決して少なくありません。
介護に利用できる補助金・助成金制度は、主に「介護休業給付金」「家族介護慰労金」「居宅介護住宅改修費」「福祉用具貸与」「特定福祉用具購入費」「高額介護サービス費制度」「高額介護合算療養費制度」「医療費控除」などがあります。
介護対象の家族1人につき通算93日まで取得でき、給与の67%を支払ってくれる制度です。
要介護4、5といった介護度が重い要介護者を家族のみで介護している場合に支給されます。ただし、自治体によって有無や条件が異なるため、事前の確認が必要です。
「居宅介護住宅改修費」「福祉用具貸与」「特定福祉用具購入費」は、介護用品・グッズや住環境の項目で解説しましたので、そちらをご参照ください。
介護保険サービス費の自己負担額が限度額を超えた場合に、申請することで限度額を超えた分の費用が還付される制度です。支給対象としては、「居宅サービス」「地域密着型サービス」「介護施設サービス」にかかった費用となります。
「福祉用具購入費」「住宅改修費」「施設サービスの食費」「居住費や日常生活費」「支給限度額を超えた利用者負担分」は支給対象外となるため、ご注意ください。
1年間にかかった医療保険・介護保険の自己負担額が高額になってしまった場合に、払い戻しが受けられる制度です。ただし、支給対象となるもの、ならないものがあり、また所得区分による支給金額なども異なります。
1年間の医療費が高額になった場合に、税金を減らしてくれる制度です。介護保険サービスの中でも医療系のサービスが対象となります。
このように、費用負担を軽減できる制度は多岐にわたります。自身や要介護者の状況に合わせて利用できるよう、知識を持っておくことが大事です。
在宅介護では、協力体制も欠かせません。
誰か1人のみに負担が大きくのしかかってしまえば、早い段階で共倒れのような状況にもなり兼ねないのです。
協力体制を築くために大切なことは、以下の2点です。
それぞれ見ていきましょう。
在宅介護をおこなうにあたっては、介護方針を明確化し、介護に携わる者全員で共通認識を持っておくことが大事です。
要介護者の希望を汲んだ上で、介護者の無理のないように方針を立てます。
どこからどこまでを自分たちの手でおこなうのか、どこからどこまでを外部に頼るのかといった線引きも、あらかじめしておくとよいでしょう。
介護の三原則である「生活の継続性」「自己決定の尊重」「残存能力の活用」に加え、介護する側の負担にも考慮した方針・計画を立てることが大事です。
在宅介護は身体的にも精神的にも大変なことが多く、1人でおこなうには負担が大きすぎます。
家族間で、役割分担をある程度決めておくことが大事です。
その際、完全に分業制としてしまうのではなく、同じ介護種目の中で役割分担をする形が望ましいでしょう。
たとえば食事介助なら、朝は夫が、昼・夜は妻が担当します。入浴介助なら、平日は妻が中心となって夫が補助につき、休日は夫が中心となり妻が補助につく、といった具合です。
同じ介護に携わることで、どこが大変か、今後どのようにしたらよいのかなどを共有でき、より快適な介護につながります。
また、普段生活を共にしていない兄弟姉妹も、休日は来てもらい介護に携わってもらうなど、関係者全員が当事者意識を持てるようにしましょう。
在宅介護を始める前に必要な準備を、いくつかの項目にわけて解説しました。
ここからは、在宅介護をおこなう際の注意点やポイントについてお伝えしていきます。いわば、在宅介護を始める時に必要な「心構え」です。
自身が前向きに介護と向き合えるよう、ご確認ください。
在宅介護だからといって、すべてを自分1人で背負ったりするのはNGです。 要介護者のために…と無理をしてしまうと、介護疲れや介護うつにも発展してしまいかねません。
休む時は休む、周りを頼るなどして、ポジティブな気持ちで介護に臨めるようにしましょう。
先述したように、介護保険サービスの中には介護休業給付金の制度などもありますが、それとは別に、勤務先ごとに優遇措置が認められている場合もあります。
仕事を持っている方は勤務先の規定を確認し、利用できるものは利用しましょう。
在宅勤務が可能なら在宅勤務に切り替える、雇用形態を変えることで在宅介護が楽になるならそちらも検討するなど、勤務先と自身の状況に応じて策を講じてください。
安易に離職するという選択肢をとってしまうと、収入も途絶えてしまいます。先にお伝えしたとおり、介護には相応の費用がかかるものです。
使える制度はありがたく使い、離職は最終手段にとっておきましょう。
在宅介護を始めるにあたっては、要介護者との話し合いも非常に大事です。
要介護者が在宅介護でどのようなことを望んでいるのか、どの部分を自力でおこなえるのか、どういうことをされると嫌なのか、などポイントを明確にしておく必要があります。
介護する側もされる側もお互いが気持ちよくおこなえるよう、コミュニケーションは密にとっておきましょう。
先にご紹介した介護サービスの中でも使えるものは使い、身体的にも経済的にも負担を減らす工夫をすることが大事です。
高齢化が進む日本では、介護に関するサービスや補助制度も想像以上に多くあります。
知識を蓄えることで自身の負担を減らし、快適な介護につなげましょう。
在宅介護は、決して楽ではありません。
どんなに要介護者が大切な存在であっても、どれだけ自身の体力・精神力に自信があっても、限界を感じてしまうこともあるでしょう。
そんなときにどうしたらよいのか、最後にご紹介します。
訪問介護とは、ホームヘルパーが自宅に来て、食事、入浴、訪問介助などをおこなってくれるサービスです。
訪問入浴サービスは、サービス事業者が専用の浴槽を自宅に運び込み、入浴の介助をおこなってくれます。
在宅介護は365日休みなく続きますし、とくに入浴介助などは身体的負担が大きくかかるものです。週に1~2回他者の力を借りるだけでも、負担は随分と軽くなるでしょう。
いずれも介護に精通したプロがおこなってくれるため、安心して任せられます。また、介護給付の対象なので、費用負担が少ない点も嬉しいですね。
訪問看護とは、看護師が自宅に来て、要介護者の病気や障がいに応じた看護をおこなってくれるサービスです。
健康状態の観察や医療措置、痛みの軽減対応などのほか、服薬管理やリハビリテーション、ケアマネージャーとの連携なども訪問看護の項目に含まれるため、随分と負担が減ります。
訪問看護も介護保険の適用内のため、自己負担額は少なくて済みます。
訪問看護をお願いしたい場合は、市区町村の介護保険窓口や地域包括支援センターに相談するとよいでしょう。
介護にかかる心身の疲労がピークに達し、介護者側の正常な判断が難しくなると、最悪の事態を招きかねません。
限界がきててしまう前に、老人ホームや介護施設への入居も検討しましょう。
在宅介護より費用は嵩んでしまいますが、手が離れる分、仕事に費やせる時間が増えるかもしれませんよ。
いざ限界を迎えてから介護施設の資料を取り寄せたり申し込んだりとなると、大幅に時間がかかってしまいます。
万が一に備えて、早い段階から老人ホームや介護施設の情報を集めておくことが大事です。
日本ではますます高齢化が進み、それと反比例するように介護人材の不足が加速しているのが現状です。
いざ自分の身内や大切な人に介護が必要となったとき、スムーズかつ快適な在宅介護に移れるかは、それまでの準備にかかっています。
在宅介護にあたって整えるべき環境や発生する費用は、楽観視できるものではありません。
しかし、それらを助ける制度も多数用意されています。
利用できる制度・サービスもしっかりと確認しながら、1つずつ着実に準備を進めていきましょう。
介護保険を利用すれば自己負担10%の費用で手すりを付けられる!?
明日からすぐできる!自宅内の転倒事故を防ぐ10の方法
~手すり施工業者にこれだけは伝えておきたい!~ 設置場所別 手すりを付ける最適な方法とは!
転倒事例を調査した研究者が伝えたい対策とアドバイス
「人生80年」でも健康なのは70年!?健康寿命を延ばすポイントとは
「すべりにくい」プラス「クッション」?階段すべり止めを選ぶポイントとは (PR)
手すりはここまで進化していた!てすりの老舗工場を取材!
初めてのDIYでも簡単で頑丈に。介護にも役立つ手すり取付のコツを伝授!
14点以下は要注意!「転倒危険度診断」で今すぐチェック!
DIYで家族の安全を守る!コロバン棒 階段手すりセットの魅力(PR)
希望のコンテンツがあればリクエストをお送りください