202601/07
日本は世界一の長寿社会を迎え、高齢者の生活の質(QOL)をいかに維持するかが大きな課題となっています。特に注目されているのが「転倒事故」です。
安全に生活するための対策として、高齢者自身の体力づくりはもちろん、自宅内の廊下や階段などに手すりを取り付けるリフォームを行うことが挙げられます。
今回は、手すり取り付けにかかる費用の相場について、場所別にご紹介します。

厚生労働省の「国民生活基礎調査(2022年)」によれば、高齢者が要介護状態となる原因の第3位は「骨折・転倒」とされており、その割合は13%に及びます。同じ調査によると、要支援の主な原因に関しても「骨折・転倒」が第3位で16.1%となっています。
また、東京消防庁によると、平成29年から令和3年までの5年間で救急搬送された高齢者の8割以上は、「ころぶ」事故でした。
そして、令和3年中、高齢者の「ころぶ」事故が発生した場所としてもっとも多かったのは、「住居等居住場所」でした。「住宅等居住場所」における搬送人員は32,466人で、このうち屋内での発生が29,786人と9割以上を占めていました。また、住宅等の屋内での発生だけで「ころぶ」事故全体の5割以上だったのです。
居間や廊下、浴室、玄関といった日常生活の動線は、ちょっとした段差や滑りやすい床材などが原因で転倒リスクを高めます。
また、転倒の背景には加齢による筋力低下やバランス感覚の衰え、さらには「フレイル(虚弱)」の進行があるといえるでしょう。特にコロナ禍を経て在宅時間が増えたことで、外出機会の減少による筋力低下が顕著になり、自宅内での転倒リスクがさらに高まっている点は無視できません。

転落・転倒事故を防いで、安心して自宅介護をするためには、まずは住宅のどこで、どのようなシーンで事故が起きやすいのかを知ることが大切です。
事故が起きやすい場所といえば、夜間の廊下や浴室内など、移動しづらかったり、体が不安定になったりする状況が思い浮かぶのではないでしょうか。
しかし実は、前出の東京消防庁の調査によると、高齢者の「ころぶ」事故の発生場所(令和3年中)で最も多かったのは居室・寝室で、全体の約75%を占めていました。あまり段差のない屋内での転倒が多いことが分かります。
⇒詳しくはこちら
あの北島三郎さんも!?自宅での転倒が大ケガにつながる!
もちろん、高齢者の健康状態や生活動線によって、危険な場所は異なります。ご自身の家庭で考えてみてください。簡単な質問でわかる「転倒危険度診断」を公開しているので、こちらでチェックしてみましょう。
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、全国の65歳以上がいる世帯を対象とし、「一定のバリアフリー化がなされた住宅」に住む世帯は 45.4% にとどまっています。ここでいう「一定のバリアフリー化」とは、2箇所以上の「手すりの設置」または「段差のない屋内」がある住宅を指します。つまり、半数以上の世帯では、まだ十分な改修が行われていないというのが現状です。
さて、バリアフリー化された住宅の中で最も普及している設備が「手すり」です。設置率は実に 85.7% に達しており、階段・浴室・トイレといった転倒リスクが高い場所で特に多く導入されています。これは、高齢者にとって手すりがいかに身近で効果的な対策であるかを示しています。

出典:総務省「令和5年住宅・土地統計調査」に基づき独自に作成
しかし、実際に自宅で設置を検討する際に気になるのは費用です。以下では取り付け費用の相場について解説します。
イメージを持ちやすいように、取り付け費用の算出方法と、家庭内のリフォーム場所別に相場を解説します。
手すりの取り付け費用は大きく分けて 材料費 と 工事費 の2つで構成されます。これらを合算した金額がリフォームにかかる総額となります。
■材料費の内訳
一般的に材料費は 全体の3〜4割程度を占めるといわれています。素材やデザイン性によって価格差が大きく、例えば屋外用のステンレスや樹脂コーティング製品は耐久性が高い分、木製に比べて割高です。
■工事費の内訳
工事費は 全体の5割前後を占めることが多く、施工条件によって上下します。特に浴室や屋外階段など、防水・耐候性の加工が必要な箇所は追加費用が発生しやすい点に注意が必要です。
最近では、手すりを比較的リーズナブルに入手できるサイトも増えています。その一例が、住宅建材アウトレットサイトの「建材サルベージ」です。こうしたアウトレット品を活用すれば、新品に比べて材料費を2〜3割程度抑えられるケースもあります。
また、ネット通販で購入した市販の手すりを業者に持ち込んで施工してもらう方法もあります。ただし、業者によっては「持ち込み不可」「保証対象外」とする場合もあるため、事前の確認が必要です。
手すりを設置する場所によって、かかる費用にはかなりの差があります。設置する場所、素材、下地の状態によって必要な工事が異なるためです。
以下に玄関・廊下・階段・浴室・トイレそれぞれについて、最新の費用の目安をまとめます。
① 玄関(ポーチ・玄関アプローチを含む)

屋内玄関の手すり(靴を脱ぎ履きするスペースなど)
限られた幅・短い長さ(1m以内程度)の手すり設置であれば、材料+工事込みでおおよそ 1~3万円 前後というケースが多く見られます。屋内側の壁に下地がしっかりしていれば、工事も軽めです。
屋外玄関階段やポーチに新たに手すりを設ける場合
屋外になると耐候性の高い素材、支柱固定、下地補強などが必要になります。例えばコンクリート階段への後付け工事では、下地工事+支柱打ち込みなどが含まれて、 10~13万円 程度という見積もりも一般的です。
② 廊下

・1mあたりの目安
廊下に手すりを設置する際、1メートルあたりの設置費用は 1~3万円程度が目安となります。これは、壁の状態が比較的良く、既存の下地が使える場合の見積もりです。
・短・中距離(例:5m前後)の廊下
5m程度の長さの廊下全体に手すりを設けると、材料・取り付け工事を含めて5万~10万円程度の費用がかかるケースが多くあります。
・壁の強度や下地処理が必要な場合
廊下の壁が石膏ボードのみで補強なし、または壁の内側に柱がないような構造の場合には、下地を補強する工事が必要となり、その分工事費が上がります。このようなケースでは見積もりが1~3万円追加になることが珍しくありません。
③ 階段

・1階→2階など、屋内階段一式の手すり設置
素材を木製と想定し、階段の上から下まで一側に連続して手すりを設けるなら、一般的な相場は 3万円~15万円です。
・左右両側設置や階段の形状が複雑な場合
形が直線だけでなく折り返し(L字型、U字型)や階段の段数が多い、勾配が急などの場合は、施工が複雑になるため費用は5万円~20万円以上に上がることがあります。手すり本体の素材、支柱の打ち込み下地などが影響します。
・屋外階段
玄関ポーチなど外構階段に設置する場合は、耐候性のある素材、防錆処理、コンクリートへの固定が必要で、 10~13万円前後 がひとつの目安です。
④ 浴室

・標準的な浴室内(タイル壁やユニットバス)での手すり設置
手すり本体+工事費で、一般的には 1万5千円~3万円 程度が目安です。形状がシンプルな I 型や横手すりであればこのレンジ内に収まることが多いです。
・複数か所設置、形状が複雑、下地補強が必要なケース
浴室壁がタイルの場合やり、防水シーリングの処理が難しい場所の場合、追加工事が発生し、 3万円以上~ の費用となることもあります。下地補強の手間、壁材の特性、設置形状(L字・縦型など)が影響します。
⑤ トイレ

・基本的な I 型 or L 型手すりの設置
立ち座り動作を補助する用途であれば、比較的シンプルな工事で済み、材料・工事込みで 3万円前後〜が一般的なスタート地点です。
・壁の強度補強や複数個所設置の場合
トイレの壁が石膏ボードのみで骨材がないようなケースでは、下地補強の工事が必要で、工賃・手間がかかります。複数場所(便座の横・背面など)に設置する場合は 5万円~10万円弱という見積もりになることもあります。
リフォーム、特に手すりの取り付けなど安全性を高める工事はどうしてもコストがかかります。ですが、多くの自治体・国の制度で費用を軽減できる助成が用意されているので、それらをうまく利用することで賢くリフォームができます。
最新の制度・条件を押さえつつ、3つのチェックポイント+自治体事例で具体的に見ていきましょう。
対象工事には、手すりの取り付け以外にも、段差の解消、引き戸への扉交換、トイレを洋式に変える工事などが含まれます。手すり設置だけでなく、「移動や立ち座りをサポートするための改修」であれば工事の対象になります。
また、原則として “1人一生に1回” の制度ですが、要介護・要支援の状態が 3段階以上上がった場合 や 住所を移した(転居した)場合 には、再び支給枠(20万円)を利用できる「リセット制度」が設けられています。これにより、ライフステージや身体状態の変化に応じた改修が可能になります。
申請する際に注意すべき点は以下の通りです。
助成だけでなく、税金の軽減制度を活用することでコストを抑えることができます。以下が最新の制度例です。
・住宅特定改修特別税額控除(所得税控除)
バリアフリー改修(手すりの設置など)を行った住宅に対して、所得税の控除が認められる制度があります。控除できる金額や対象となる条件は、改修工事の種類・工事費用・確定申告書類の提出などで異なります。
・固定資産税の減税措置
築年数が経過している住宅で、一定額以上のバリアフリーリフォームを実施した場合、翌年度の固定資産税が減額されるケースが自治体によってあります。改修費用や改修の内容(手すり・段差解消など)が一定の基準を満たすことが条件です。
他の税優遇・贈与税の非課税制度
親や祖父母などから改修資金の援助を受ける場面では、贈与税非課税の対象となる場合がある自治体もあります。具体的な枠や条件は自治体で異なるため、役所の相談窓口で確認が必要です。
国の制度だけでなく、住んでいる市区町村独自の補助・助成制度も重要です。具体例をいくつか挙げます。
| 自治体 | 制度例 | 内容概要 |
|---|---|---|
| 足立区(東京都) | 住宅改良助成制度 | ・自身の居住する住宅または分譲マンションの共用部分における段差解消工事などが対象 ・最大30万円が助成 ・家屋内で行う工事については、65歳未満の世帯や介護保険非該当の世帯が焦点 |
| 三条市(新潟県) | 高齢者住宅整備補助事業 | ・補助の対象者は、市内に居住するおおむね65歳以上の要支援者で、世帯収入の合計が600万円未満であるなどの条件が定められている ・補助額には最大30万円の限度額が設定されており、世帯の所得に応じて補助率(50%から100%)が変動 |
| 福岡県 | 高齢者等在宅生活支援(住みよか)事業 | ・介護保険の住宅改修の限度額(20万円)で不足する費用を補助することを主な目的としており、最大30万円までの助成が受けられる ・対象者は、要介護認定を受けた方や特定の障害を持つ方、およびその世帯構成が個人市町村民税非課税である世帯に属する方など |
これらの制度は、「介護保険給付が対象外となる部分を補う」「給付率を上げる」「自己負担をさらに軽くする」目的で設けられています。
今回は手すり取り付けにかかる費用の相場を、場所別に紹介しました。施工業者によって価格設定は異なりますので、数社の業者に見積りをとって比較してみることをおすすめします。
大切な家族の安全を守る工事ですので、助成制度も賢く利用して、安心して過ごせる住まい環境を整えたいものです。

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