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202601/07

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慣れている環境だからこそ要注意!自宅での転倒を防ぐためには?

世界一の長寿命国・日本。高齢化がすすむ中、健康で豊かな老後を過ごすために気を付けなければいけないことも増えてきました。

そのひとつが「転倒によるケガ」。特に自宅内は見慣れた環境だからこそ油断しがちですが、大きな事故につながる危険をはらんでいるのです。

転倒の現状とデータからみる深刻さ

高齢者にとって転倒は骨折や頭部外傷などの大けがにつながるリスクが高く、それがきっかけで介護が必要な状態になるケースも少なくありません。もちろん、外出先など慣れない場所での転倒には細心の注意を払うはずですが、落とし穴となるのが自宅での転倒。自分にとって住み慣れた自宅でさえ、こういった事故は起こってしまうということです。

逆に考えると、住み慣れた自宅だからこそ、転倒などに対する注意や対策がおろそかになってしまう、とも言えます。「まだまだ自分は大丈夫」と思っていても、体の衰えは避けられないもの。本人はもちろん、家族も気を配って、危険の芽を摘み取ることが大切です。

政府の人口動態調査によると、2023年に自宅内で「スリップ、つまずき及びよろめきによる同一平面上での転倒」と「階段及びステップからの転落及びその上での転倒」によって亡くなった方を合わせると2,200人。毎日約6人の方が亡くなっている計算になります。さらに、そのうち91.4%の2,011人が65歳以上の高齢者です。

出典:政府統計の総合窓口「家庭における主な不慮の自己による死因(三桁基本分類)別にみた年齢(特定階級)別死亡数及び百分率(2023年)」

高齢者にとって、「転倒」は日常生活における重大なリスクの一つです。東京都消防庁のデータによれば、令和3年中、都内では交通事故を除く日常生活事故で約12万3千人もの人が救急搬送されており、その半数以上が65歳以上の高齢者です。5年間で累計39万人以上の高齢者が、日常の事故で救急医療を要する状態となっています。

特に、転倒事故が最も多く、高齢者の事故の80%以上を占めています。令和3年には、53,675人もの高齢者が転倒によるけがで救急搬送されており、年齢が上がるほど軽症では済まず、中等症以上で入院を要するケースの割合も増加します。

また、これらの転倒事故の発生場所を詳しく見ると、住宅、とりわけ「屋内」が圧倒的に多いことが分かります。令和3年では住宅等居住場所での転倒事故は屋内のほうが屋外より遙かに多く、居室・寝室、玄関・勝手口、廊下・縁側・通路といった家庭の中の日常の動線上での事故が上位を占めているのです。

出典:東京消防庁「救急搬送データからみる高齢者の事故」を元に作成

こうしたデータから、自宅での転倒の可能性は非常に高いといえます。自宅は「安心できる場所」「慣れた場所」であるがゆえに、危険に気づきにくい、また備えが充分でないケースも少なくありません。

歩く際のわずかな段差、畳や敷居の境目、夜間の暗さ、滑りやすい床など、一見ささいな要因が転倒につながることがあります。加えて、高齢になることで、筋力、平衡感覚、視力・聴力など身体機能は少しずつ低下します。これらの変化に対して適切な配慮がされていないと、転倒リスクは格段に増すのです。

転倒は軽視できない影響をもたらします。まず、けがや骨折の発生、入院や通院による身体的・心理的負担、生活の質の低下があります。特に高齢者では、骨粗鬆症などで骨がもろくなっていることもあり、転倒による骨折が長期の寝たきりや介護状態へのきっかけになることもあります。

また、転倒そのものへの恐怖から活動範囲が狭まり、筋力やバランス感覚がさらに低下するという悪循環に陥ることもあります。

なぜ高齢者は転倒しやすいのか

高齢者の転倒は単なる「つまずき」や「よろめき」といった偶発的な出来事に見えるかもしれません。しかし実際には、加齢に伴う身体機能の衰えや生活環境、さらには心理的な影響が複雑に絡み合った「必然的なリスク」といえます。ここでは、高齢者が転倒しやすい主な要因を多角的に整理していきます。

身体的要因

加齢により生じる身体機能の低下は、転倒リスクの根本的な背景です。

・筋力の低下
特に下肢筋力の衰えは顕著であり、大腿四頭筋や腓腹筋の筋力が弱まることで歩行の安定性が損なわれます。

65歳を超えると筋力は年間約2~4%低下するという報告 も。このため、同じ動作でも若年者より体への負担が大きくなり、段差や階段を上る際のつまずきや転落につながります。

・バランス感覚の衰え
前庭機能(内耳の平衡感覚)や深部感覚(体の位置を把握する感覚)が加齢で低下し、姿勢を保つ能力が衰えます。その結果、ちょっとした外力や不意の体勢変化でも踏ん張りがきかず、倒れやすくなります。

・視覚・聴覚の低下
白内障や緑内障による視力障害は、段差や障害物の認識を遅らせます。また、難聴により周囲の音(接近する自転車や家族の呼びかけなど)が聞こえにくくなり、危険察知の遅れを招きます。

・服薬の影響
高齢者は高血圧や糖尿病、不眠症など複数の疾患を抱えている場合が多く、複数の薬を併用しているケースが少なくありません。降圧剤による立ちくらみ、睡眠薬によるふらつき、抗うつ薬の副作用などが転倒を引き起こすリスク要因となります。実際、ポリファーマシー(多剤併用)は高齢者転倒の危険因子として国内外のガイドラインでも指摘されています。

環境的要因

身体機能の衰えに加えて、生活環境そのものが転倒リスクを高めています。

・住居内の危険箇所
特に自宅での転倒が多いことは前出の消防庁の統計でも明らかになっています。玄関の段差、浴室や台所の濡れた床、夜間の暗い廊下、散乱したコードやカーペットのめくれなどは、いずれも転倒の温床です。
高齢者が一日の大半を過ごすのは自宅であるため、生活動線上の小さな危険が事故に直結します。

・階段や段差の存在
日本の住宅はバリアフリー化が進んできたとはいえ、依然として階段や段差が多く残っています。特に木造住宅や築年数の古い集合住宅では改修が不十分で、80歳以上の高齢者が階段で転倒し大腿骨を骨折するケースが後を絶ちません。

・公共空間でのリスク
屋外でも、舗装の不整地や信号待ちの段差、駅の階段などが危険要因となります。外出先で転倒すれば救助までに時間を要し、搬送や治療が遅れることも少なくありません。

心理的要因

転倒リスクは身体や環境だけでなく、心理面によっても左右されます。

・転倒恐怖による活動量の低下
一度転倒を経験した高齢者は、「また転んでしまうのではないか」という不安から、外出や運動を控える傾向があります。しかし、活動量の減少は筋力低下やバランス能力のさらなる悪化を招き、結果的に転倒リスクを増大させる悪循環に陥ります。

・自己効力感の低下
転倒は「自分はもう自由に動けないのでは」という心理的な打撃を与えます。自信を失った高齢者は、生活全般に消極的となり、社会的孤立やうつ症状の発症につながることもあります。これは肉体的な要因に劣らず深刻な問題です。

・過信もまたリスク
一方で、まだ若いと思い込み無理をしてしまうケースもあります。杖を使わずに外出したり、暗がりでも照明をつけずに歩いたりすることが事故につながります。自分の身体機能を正しく理解しない「過信」も心理的リスクの一つです。

複合的なリスク要因

実際の転倒事故は、これらの要因が単独で作用するのではなく、複数が重なり合って発生します。

たとえば「降圧剤を服用している高齢者が、夜間に照明をつけず、浴室の濡れた床で滑る」といった状況は決して珍しくありません。このように身体・環境・心理の三要素が相互に影響し合うことを理解することが、効果的な転倒予防の出発点となります。

転倒を防ぐための取り組み

転倒は不可避のものではなく、適切な対策によって大幅に減少させることが可能です。ここでは「住環境の整備」「身体機能の維持」「生活習慣の見直し」「社会的支援」という4つの観点から具体策を見ていきます。

住環境の整備

段差の解消や手すりの設置は基本です。浴室には滑り止めマットを敷き、廊下や階段には十分な照明を確保することが望まれます。

また、絨毯やコード類といったつまずきやすい物を片付けることも効果的です。自治体の住宅改修補助制度を利用すれば、経済的な負担を軽減しながら安全な住環境を整備できます。

身体機能の維持

転倒予防の核心は「歩く力」を保つことにあります。スクワットやかかと上げ運動など、下肢の筋力を鍛える簡単な体操は在宅でも実践できます。

バランス感覚を養うために片脚立ちやヨガを取り入れることも有効です。地域の健康教室やシニア向け体操プログラムは継続的な運動習慣の形成に役立ちます。

生活習慣の見直し

栄養不足は骨粗鬆症を進行させ、転倒後の骨折リスクを高めます。カルシウムやビタミンDを含む食事の摂取、適度な日光浴が重要です。

また、睡眠薬や降圧剤などの服薬については、医師や薬剤師に副作用を相談し、必要に応じて調整を行うことが勧められます。

社会的支援の活用

行政や地域包括支援センターでは、転倒予防教室やリハビリ支援を提供しています。こうしたプログラムに参加することで、運動だけでなく社会参加による心理的安定も得られるでしょう。

さらに、地域全体での見守り体制の強化にもつながり、転倒事故の早期発見・早期対応の可能性が上がります。

転倒予防がもたらすメリット

転倒予防の取り組みは、高齢者本人の安全だけでなく、家族や社会にとっても多大なメリットをもたらします。

本人にとってのメリット

転倒しないことで自立した生活を長く維持でき、介護を必要とする時期を遅らせられます。

また、安心感から活動範囲が広がり、趣味や社会参加を楽しむことができるでしょう。これは「健康寿命」の延伸そのものであり、人生の質を高めます。

家族にとってのメリット

転倒が原因で骨折や要介護状態になると、家族の介護負担は急激に増すのが実情です。転倒予防はその負担を未然に軽減し、介護離職など社会的問題の抑制にもつながります。

安心して暮らせる環境は、家族の精神的な安定にも寄与するでしょう。

社会にとってのメリット

転倒事故が減少すれば、医療費や介護費用の抑制につながります。厚生労働省の試算でも、転倒予防の取り組みは医療・介護制度全体の持続可能性を高める有効な施策とされています。

さらに、高齢者が安心して活動できる社会は地域活性化にもつながり、世代間交流の促進にも寄与します。

家の写真

まとめ

高齢者の転倒は「偶然の事故」ではなく、身体・環境・心理の要因が積み重なった「予測可能なリスク」です。だからこそ、住環境整備や運動習慣、社会的支援を組み合わせた予防が求められます。

転倒を防ぐことは、高齢者本人の尊厳を守るだけでなく、家族の安心、社会全体の持続可能性を支える行動でもあります。「転ばぬ先の杖」という言葉の通り、転倒予防は未来への投資といえるでしょう。

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